浜松市政向上委員会、鈴木恵です。
第179号議案、平成30年度浜松市一般会計補正予算(第6号)と第180号議案、浜松市区の再編に関する住民投票条例制定について、反対の立場から、討論致します。
この2議案は、区の再編に関する住民投票をしていくための予算案と条例案ですので、合わせて意見を申し上げます。
先に申し上げておきます。私は区の再編そのものに絶対に反対するものではありません。
市民の生活に関わる重要なことは、議会だけで決めるのではなく、市民参加で、市民が決定に関わっていくことは必要なことです。住民投票は、市民の「政治参加の手段」のひとつでありますが、あくまでも最終手段です。
私は、東北大震災後の6年前、中部電力浜岡原子力発電所の再稼働の是非を問う県民投票条例制定の直接請求の請求代表人の一人でした。さらに、署名活動においての静岡県西部地区の代表者も務めていました。
県民投票を実現するために、必要な条例の制定を求めての署名活動をし、予想を超える賛同を得て必要数の二・七倍近い16万5000人余の署名を県に提出しました。署名を集めた2ヶ月間には、勉強会をしたり、街頭で訴えたり、一人ひとりに説明し、理解を求めました。署名を始めた当初は、浜松駅前等で署名を呼びかけてもけげんそうに見て通り過ぎる方が多かったのが、大飯原発(おおいげんぱつ)の再稼働があれよあれよと決まってしまった中盤以降は、「署名させてください」、「署名できるところを探していました」とみずから駆け寄ってくださる方が日に日にふえてきました。未成年である高校生からも「署名させてください」、「私たちにも意見言わせてください」と懇願されたこともありました。大事なことは私たちが決めたいというみんなの意志を実感した署名活動でした。しかし、県議会で否決されてしまい、県民投票は実現しませんでした。
ですから、住民投票の意味、意義は十分理解しているつもりですし、自分たちのまちの未来を自分たちが直接決めたい、市民抜きで勝手に決めないで欲しいという意見よくわかります。
しかし、今回の区の再編に関わる住民投票については「ちょっと待った!」です。
その理由は、5つです。
1点目は、誰が住民投票を望んでいるのか、市民への問いかけ、対話は十分進めてきたのかという点です。
先ほどお話をしました、浜岡原発の県民投票では、16万人を超える県民からの請求がありました。今回は、自治会連合会からの要請からとなっていますが、それは、市民の何パーセントが望んでいることになるのでしょうか。条例で公的に設置している地域からの意見を集約・調整する各区協議会からの意見で、住民投票の要望はあったのでしょうか?
これまで、区の再編についての説明は、連合自治会、区協議会、まちづくり協議会、みんなでまちづくりトークなどごく一部に限られていて、多くの市民への問いかけ、対話は十分ではありません。
ごくわずかな人たちにだけに、説明をし、意見を聞き、それで十分だから、他の多くの市民への丁寧な対話をすっ飛ばして投票という行為に持っていくというのは、横暴です。
2点目は、直接的に区の再編に関係のある、合併した市町村と旧浜松市民とでは、関心度合いが大きく異なり、なのに関心が薄い地域に人口が多い点です。
一番人口の多い中区の住民にとって、区がいくつになっても生活は変わらないため、関心は低いです。中山間地域のことを、都市部の人が決めていいのでしょうか?市民の間に分断が生まれないか、心配です。さらに一部地域、一部の住民についての事柄を、住民投票で決めてはいけないというのは、住民投票の鉄則ですが、今回はこれに反しています。
水道のコンセッション導入の是非で住民投票をするなら、わかります。水道は、誰もが関係するものですし、関心も高いです。住民が将来リスクをどう考えるのか、学び、自分たちで決めていくという住民投票の仕組みに馴染むものだと思いますが、区の再編は、市の説明どおりの行革の一環、組織の見直しなら、市民には関心が低くても仕方がありません。住民投票で決めるものではありません。
3点目は、再編案については市民の中には多様な意見があるのに、反映しにくいという点です。
再編には賛成だが、2区案がいい、再編には賛成だが、3区では少なすぎる。再編には賛成だが、市民サービスが低下かしないか心配。防災拠点はどうなるの?再編には賛成だが、新3区案は賛成できない。市民サービスが低下するから再編に反対。そもそもなんで7区にしたんだっけ?、わからないなどなど。投票用紙には、どちらかにマルをつけるだけ、条件や意見を書くことはできません。つまり、住民投票という仕組みに馴染みません。
市長は、総務委員会終了後の記者団の囲みの中で「率直な市民の意見を聞ける」と発言していますが、二者択一で、率直な多様な意見をどう聞けるのでしょうか?
4点目です。今回の住民投票で提示する、天竜区、浜北区、それ以外5区を一つの区にする、新3区案の将来ビジョンや都市計画との整合性などについて、不透明で生煮えの提案であることです。
特別委員会の審議でも「新3区はやむを得ない」「まちづくりの観点からは2区案がいいのだけど」という、新3区案には消極的、絶対押しという意見ではありませんでした。
先の一般質問で、私は新3区案の将来ビジョンを聞いたのですが、答弁は「今回の区の再編は、区役所の再統合であり、地域を変えるものではない。現在区で実施している事業は継続していく。」でした。これって、将来ビジョンなのでしょうか。ホームページに掲載されている新3区案には、他の案には掲載されている区ごとのイメージすら、掲載されていません。
また、都市計画マスタープランとの整合性を聞いたところ、「結果において、必要に応じ、見直すことは見直す」と答えています。地域を変えるものでないと一方で言いながら、一方では都市計画マスタープランは見直すこともありと答えている。これって、矛盾していませんか?都市計画マスタープランは、将来の都市構造、交通や土地利用など、将来の浜松のまちづくりを示したものです。
不透明で生煮えの提案は、市民に失礼です。
5点目は、住民投票の投票運動は、公職の選挙に大きく異なり、自動車や拡声器の使用制限、ビラの頒布、ポスター掲示の制限、テレビCMの規制などがなく、支出額の制限がないことです。
資金力を持って投票運動、政治活動に関われば、テレビやラジオCM、新聞広告、大量のビラ、のぼりなどを使って運動が際限なくできます。そのため、市民に公平で正確な情報が行き渡らないという可能性があります。CMは、自分は影響を受けていないと思っても、無意識のうちに影響を受けてしまう怖さがあります。まちがったプロパガンダが広がる危険性があります。
心ある浜松市議会議員のみなさんが、将来に恥じない判断をしてくださることを信じ、私の討論を終わります。