「障害児の親(ケアラー)支援について」〜一般質問その1

今回のテーマは、「見えにくい問題にも目を向ける」

 

「障害児の親(ケアラー)支援について」

 

以前に比べると、子育て支援、育児と仕事の両立支援制度は整ってきた。しかし、それらは健常の子を想定したものであって、障がいのある子を持つ親にとっては不十分だ。これまで障がいのある子を抱えては、仕事との両立ができにくい、できないという声を多く聞いてきた。

 

そこで、私は障がいのある子を持つ親は具体的にどんなことに困っているのか、どういうサービスがあれば仕事ができるのかなどについて、インターネットを使い、独自にアンケート調査を実施した。その結果、8月1ヶ月間で211名の方からの回答をいただいた。自由解答欄には100名もの方からいただき、その切実な声に胸が詰まった。

 

主な質問と回答を紹介。

 

●子どもに障がいがあるとわかってから、仕事はどうしましたかという質問に対して

すでに仕事を辞めていた人は39.8%で、継続した人は16.5%。

その一方、仕事を辞めた12.6%、勤務時間を減らした13.6%、転職をした4.9%、など、働き方を変えざるを得ない方が3割以上もいた。

 

●障がいの子どもをケアすることによって、生活への影響はありますか。(複数回答)という質問に対して

約6割の方が「自分の時間が取れない」「仕事をする時間が取れない」と回答している。趣味や運動など、自分のことは後回しにならざるを得ない状況が見てとれる。仕事も諦めざるを得ない。

 

●現在さまざまな理由で働きに行けない方も含めて、どういうサービスがあれば、仕事との両立ができる(できた)と思いますか。(複数回答)という質問に対して

 多様な預け先が欲しい、また児童発達支援・放課後等デイサービスの曜日拡大・時間延長を求める声が多かった。

障がい児者の預け先は限られていて、預けられたとしても時間が短く、仕事との両立が難しいのが現状。ショートステイなどは何ヶ月も前からの予約をしないと受けらない。

 

自由回答からは、特別支援学校高等部卒業後、生活介護施設への通所に移ると、午後3時には施設が終わってしまうので、それまで継続してきた仕事ができなくなってしまう。昨年浜松市からサービス利用の定員遵守の通知があり、その影響で、今後コンスタントにサービスが利用できなくなるのではないか、それでは仕事を続けられないという不安の声もあった。

 

「私は死ぬ直前まで障害のある子どもの世話に明け暮れなくてはならないのでしょうか。少しは自分の人生を体が自由に受けるうちに好きに生きたいです」とか

「健常の子は、学齢期を過ぎ、仕事に就けば子育ては終わり。しかし、障害のある子は通所施設に通う年齢になってからも、同居している限り、施設の送迎時間、短縮日課、夏休みなどを調整して仕事を続けなければならず、また親の年齢とともに毎日の身辺介助も大変さを増してきます」という声もあり、障害の子どもを育てる親の苦労は並大抵のことではない。

 

経済的な負担を訴える声も多かった。親、特に母親による在宅でのケアを前提としているため母親が障害児のケアに専念せざるを得ない。「男は仕事、女は家庭」の意識も根強く残り、男女の収入格差も相まって、母親が仕事を辞めざるを得ない状況だ。

その結果、家計はシングルインカムとなり、さらに障害児のケアには療育、補助器具、遠くの医療機関への受診など特別な出費が必要のことが多く、やりくりが大変。特に一人で障害児を育てるシングルマザーにとっては、厳しいものがある。さらに、低収入や無収入は、その後の低年金に直結し、高齢期の貧困に繋がってしまう。

障害児の親は、健常児の親以上に、子育てに対する心身負担、経済的困難が大きいものがある。

 

そこで、アンケートの結果を踏まえて、伺う。

1点目は山名副市長に伺う。

障がいのある子どもの親への支援はまだ不十分だと考える。子育て支援でもある障がいのある子の親支援の必要性について、どう考えるのか、伺う。

 

<答弁 抜粋>

障がいのある子どもへの支援はあっても、育てる親に対しては、目を向けられることが少なく、孤独感を抱えたり、自身の健康に不安を感じたりしている親の視点にタイって支援を検討することも必要。

 

障がいのある子どもの親が、希望を持ち、安心して暮らしていくためにが、子どもをケアすることによる生活への影響等を踏まえ、課題やニーズを的確に把握して、支援や情報提供を行なっていくことが大切であると考える。

 

2点目、障がいのある子を育てる親支援の充実について2点伺う。

アとして、「はますくヘルパー」について。

妊娠中、また出産後一年未満には、家事支援をする「はますくヘルパー」が訪問できることになっているが、未熟児で生まれた子、医療的ケアの必要な子、眠らない子などもの親への支援としては、期間や時間は大変不十分だ。そこで、必要と認められれば、障害のある子の親に対して、「はますくヘルパー」を時間数、対象年齢などを拡充できないか。吉積こども家庭部長に伺う。

 

<答弁 抜粋>

はますくヘルパーの利用状況の分析や、アンケート調査などによりニーズを把握し、支援の必要性の高い保護者への負担軽減に繋がるよう、対象年齢や利用時間制限の見直しについて検討していく。

 

イとして、通学支援について。

ひとりで通学が困難な児童・生徒のため、親は毎日送り迎えをしなくてはならない。

アンケートでは、50%の方が通学の支援があれば仕事を続けられるという回答だった。

 

大阪府枚方市(ひらかたし)では、障害児通学支援事業として、一人で通学が困難な児童・生徒を対象とし、通学ガイドヘルパーを派遣する事業を201210月から開始している。対象者は小・中・高・支援学校に在籍し、保護者等の病気療養だけでなく、就労などの理由も可能としている。利用者負担は原則1割。

横浜市は、一般的な移動介護の他に、車を使用した通学通所支援を設置している。

そこで、浜松市においても、通学の移動を支援するヘルパーの派遣制度を導入できないか。山下健康福祉部長に伺う。

 <答弁 抜粋>

他都市の状況を踏まえ、関係機関との連携を図りつつ、移動支援事業の対象拡大を検討していく。

 

3点目は、医療的ケア児とその親支援について。

たんの吸引などの「医療的ケア」が必要な子どもや、その家族を支援する法律「医療的ケア児等及びその家族に対する支援に関する法律」が施行され1年が経った。まだまだ、保護者の負担は重く、医療的ケア児が社会の中で育ち、学べるようになるまでの課題は多いのではないかと思う。

浜松市では、令和3年度から医療的ケア児等コーディネーターが設置されている。その成果と課題、今後の増員について、山下健康福祉部長に伺う。

  <答弁 抜粋>

コーディネーターの存在が十分に知られていないことや、医療的ケア児の受入機関が少ないことなどが課題。今後、医療的ケア児等コーディネーターの事業周知を強化し、増加が見込まれる医療的ケア児等に対応できるよう、コーディネーターの増員を含め、関係機関と連携し、事業の拡充を検討していく。

 

4点目は、情報提供について。

障害のある子の親支援については、子育て支援課、障害保健福祉課、健康増進課、幼児教育保育課、教育委員会など複数の課にまたがっていて、どこを見れば必要な情報があるのかわからない。アンケートでも、丁寧な情報提供を求める声があった。そこで、支援情報をライフサイクルごとにホームページで提供するようにできないか、吉積こども家庭部長に伺う。

  <答弁 抜粋>

障がいのある子どもへの支援制度の内容等が体系的にわかりやすく届けられるよう、関係課が連携するとともに、ライフスタイルにあった情報がホームページ等で提供できるように検討する。