多様性時代にそぐわない中学のブラック校則を変えたい。〜中学生からの相談から始まり、市民団体と一緒に取り組んだ〜
2019年8月、トランスジェンダー(戸籍女子、性自認男子)の中学生から、「学ランを着て登校したい」、しかし、学校が許可しないため、学ランで登校できないという相談を受けた。私は、2015年に性的マイノリティに関する議会質問をし、当時の教育長から「個別の配慮をするよう各学校に伝える」「教職員が性的マイノリティーについての理解を深めていくよう努める」と答弁があったが、4年経っても現場では合理的配慮がなされていなかったことにショックを受けた。
「他にもこうした悩みを抱えている子どもたちがいるに違いない」それなら、校則にどう書かれているのか、全ての中学校を調べて、「みんなの問題にしていきたい」と、浜松トランスジェンダー研究会と一緒に、調査を始めた。最初は保護者に聞いたり、SNSで情報を募ったりしていたが、最終的に情報公開請求を出し、全48校分の校則を集めた。
そこには、男女別で服装や髪型が規定されているほか、「おかしな校則」が見つかった。例えば暑さ寒さを我慢せよということなのか「うちわ・扇子不可」「マフラーは不可」。それから10校では「下着の色は白」と決まっていた。また、ポニーテールはダメなど、合理性に欠けていたり、今の時代に合っていない校則が多く見つかった。また、すべての学校で、制定や改定などの手続きが明記されていなかった。
調査結果をもとに、11月議会で、多様性の尊重という観点から校則に関する考え方を一般質問した。教育長からは、『(校則は)多様な価値観を尊重する社会の変化に対応するように、常に見直され、更新されていくべきものである』という認識と『校則についてより積極的に見直していくことを促していく』という答弁を、また市長からは『自主性や自発性を尊重することは重要である』という答弁を受けた。
一部メディアから、調査結果を教えて欲しいという問い合わせがあったため、一般質問の同日午後に、浜松トランスジェンダー研究会の代表とともに記者会見をした。反響は大きく、地元紙2紙(1紙は一面で)、全国紙3紙、NHKを始めテレビ2社、文春デジタルが取り上げた。
教育委員会は全小中学校に校則を時代に合わせて見直す旨の通知を出し、生徒指導の先生向けの研修会を実施し、校則の見直しを促した。その後、全ての中学校で校則の見直しがされ、8割の中学校で制服、頭髪、靴や靴下の色、防寒着等の項目について、色や形の指定の禁止、男女の区別等の記載の仕方について変更を行った。また、生徒自身が校則見直しの必要性についてアンケートに意見を書いたり、話し合ったりする活動を取り入れた学校も出てきている。
さらに、新聞の切り抜きをもって三者面談に臨んだ保護者、自分事として新聞を初めてちゃんと読んだという生徒、理不尽な校則の調査をする生徒など、今回の件を通して学校や社会との関わり方について考える、保護者や生徒が増えてきている。